SIN@SAPPOROWORKSの覚書

C#を中心に、夜な夜な試行錯誤したコードの記録です。

電話機の呼出音を鳴らしてみる(実験用16Hz信号発生装置の作成)

1 呼出ベルの規格


電話の着信時、交換機から15Hz以上20Hz以下の周波数の信号が断続的に流されます。また、送出電圧は、交流65Vrms以上83Vrms以下になっています。電話機はこの信号に反応して呼出しのベルが鳴ることになっています。 (通常16Hz、75Vrmsと紹介されているようです)
今回は、この16Hz75Vrmsを擬似的に発生させて、電話機の呼び出し音を鳴らせて見たいと思います。
なお、電圧は75Vrmsとなっていますが、伝送路で減衰するため実際はもっと低い電圧でも電話機のベルは鳴ります。
しかし、周波数については、着信検出回路にはフィルタが入っているようなので、ある程度の正確さは必要なようです。

2 トランスによる電圧変換とPICでの発振回路

75Vrmsを直流で作成するとなると結構大変です。 そこで、トランスを使用して電圧変換することにしました。(トランスは先日分解したACアダプタから取ったものです。)
また、1次側の交流の電流は、大きな電流が必要なため、スイッチングのために、FETを使用しました。
【NDB603AL N-Channel Logic Level Enhancement Mode FET】

16Hzの発信は、とりあえず、PICで作成しました。


#include<16F819.h>
#fuses INTRC_IO,NOPUT, NOWDT, NOLVP, NOBROWNOUT,NOPROTECT
#use delay(CLOCK=4000000)
//RB2に16Hzを発生させる
int isOn=false;
int f16_inval=0;
#INT_RTCC   //割込み処理の開始指定
f16hz(){ 
	f16_inval++;
	if(f16_inval<120) //120回に1回処理すると、丁度16Hzになる(クロック依存)
		return;
	f16_inval=0;

	if(isOn){//Highの場合
		isOn=false;
		output_low(PIN_B1);//Lowにする
	}else{//Lowの場合
		isOn=true;
		output_high(PIN_B1);//Highにする
	}	
	
}
void main(){
	setup_counters(RTCC_INTERNAL,RTCC_DIV_1);//タイマ0のプリスケーを1/1に設定する
	enable_interrupts(INT_RTCC);	//タイマ0の割り込みを許可する
	enable_interrupts(GLOBAL);	//GLOBAL割り込を許可する

	while(1){
		;
	}
}

3 回路図

1次側のトランスを電流駆動することで、5Vの電源電圧でも電話機を鳴らすことが出来ました。
図中の電流制限抵抗(R1)の値によって2次側に発生する電圧のVRMSが変化しますが、ある程度のVRMSが無い場合、電話機は反応はしているようだが鳴りきらないという状態になります。

表は、色々と抵抗値を変えてみた時の電流・電圧の測定値と、電話器の着信可否の結果です。
電話機によっては、小さな電圧でも着信するものも有るようですが、確実に呼び鈴を鳴らすには、22Vぐらいは最低限必要なようです。

4 実験

実験中の様子です。
電流制限抵抗を変えて色々の電圧を試してみましたが、2次側に現れる波形は大きくは変わっていません。果たして、こんな不細工な波形でいいのか・・・・

5 インバータICによる発振への変更

16Hz発信のためだけにPICを使用するのも、ちょっとちょっとなので・・・インバータICを使用した、抵抗とコンデンサだけの簡単な発振回路を作成してみました。 使用したICは74LS14です。【HD74LS14 シュミットトリガインバータ】
回路図は、非常にシンプルです。 (※74LS14への電源は省略されています )

6 波形の観測

発生するのは弛張型です。 しかし、HighとLowの時間間隔が、完全に正確では無いようですが、軽易に作成するには非常に簡単です。
コンデンサと抵抗の数値を変更することで、任意の周波数を得ることが出来るようですが、範囲には限界がありそうです。
比較的低い周波数(1KHz以下ぐらい?)でないと、厳しいニーズには耐えないかも知れません。
定数を変更して測定した結果は図のとおりです。 (回路の発振周波数は、f(hz)=1/CRです)

7 実験用16Hz信号発生装置

先に検証した信号発生回路に16Hz発振部分をPICからインバータCR発振に変更し、信号発生装置としました。
信号発生時以外は、FETのゲートをGNDに落とすスイッチと、信号が流れている間に点滅するLEDを追加しました。 信号が流れている間は、1次側に大きな電流が流れつづけますので、警報のためにLEDは赤色です。

8 一応完成

あくまで実験用ですので、電源及び電話接続は、ブレッドボードで行えるようにピンになっています。

9 参考文献

事業電気通信設備規則
トランジスタ技術SPECIAL No.8 データ通信技術のすべて
トランジスタ技術SPECIAL No.51 データ通信技術基礎講座
本ページの内容は、電話回線に接続して実験したものではありません。
参考資料等で入手した情報を、回線に接続しない環境(机上)で試しているのものです。
事業電気通信回線設備(NTT電話線など)へは、認定を受けていない端末は接続できません。くれぐれもご注意ください。